*1 昔，この地に村井藤斎という者が茶店を構え，妹が茶を出して旅人を休ませていた。<br />
　ある日，一人の僧が来てその茶店で休憩をしたところ，妹はすぐに大変深くこの僧に恋をした。そして，この僧が立ち去ると，僧の飲み残した茶を飲んだ。すると，不思議やたちまちにして懐妊し，男の子を産み落した。<br />
　それから，三年してその子（を）抱いて川で大根を洗っていると，旅僧が現れて，嗚呼不思議なるかなこの子の泣き声がお経を読んでいるように聞こえるという。振り向いてその旅僧を眺めると，三年前に恋をした僧であった。<br />
　妹が前年の話をすると，その僧が僧が男の子にフッと息をふきかけたとたん泡となり消えてしまったという。<br />
　僧が云うに，西の方にある「あら井」というところの池の中に貴き地蔵があり，この子のためにお堂を建て安置せよ。<br />
　現在は西福寺の地蔵堂に祀ってある。<br />
　このことは西生来の町名の由来でもある（案内板に拠る/一部改）。